村瀬彰吾がつづる新選組話題を含む日記&エッセイ。

時代劇が減ってしまって―――


僕は、小さい頃から時代劇少年だったから、よく近所の映画館に、お下がりの3本立てを見に行ったことは以前に書いた。

そこは、西荻シネマというところで、子供は入場料30円だった(昭和34~5年ごろ)。
古い劇場だったから、トイレの臭いが客席まで延びてきて、臭い中みんな楽しんでいた。あの当時、そういうことは良くあることで、汚い臭いはことさら変に思わなかった時代だったかもしれない。

NHKは、『カーネーション』という朝ドラを今、放映しているが、ここ数日、終戦直後の大阪岸和田あたりを描いている。
でも、NHKのいつもの手法で、町並みや服装など、余りに綺麗過ぎて実感がわかない。
もっと、よれよれ、ボロボロのはずなのに。

昨日、BSで、山田洋二監督が選んだ名画を放映していたが、黒澤明監督の『生きる』だった。
以前にも見ていたから、もう何回目かなんだけれども、みるたびに感動、感心する。

特に、最後の通夜のシーンは圧巻で、役所勤めの役人たちの本性を見事に描いている。
主人公の市民課長(志村喬)が亡くなり、遺影を前にして、最初は同席していた市役所の助役に、同僚たちは気を使って飲んでいた。
が、その助役がいなくなると、酔いが回っていくに従って、徐々に本音を言い始めるのだが、このくだりは見事としか言いようがない。
本当に、よくある光景なのである。

藤原鎌足や左朴全、千秋実などの名優の演技がなんとも素晴らしい。
僕は、長年役所勤めだったから、中間管理職のずるさと悲哀が切実に理解できる。
その中で、まじめな一人の職員が、正しい意見を力説する。だが、所詮は空しい。
あれが、今でも、役所の実態である。

黒澤明という監督さんは、あの映画を撮った昭和26年当時、40歳そこそこだったらしいが、役所というものを良く調べ上げて、たらいまわしの実像を生々しく演出している。
それに、終戦直後の汚くも雑然とした、徐々にアメリカナイズされていく繁華街の様子を、リアルに描いていて貴重である。

そして、何よりも、主人公が胃がんを宣告されてからの、意識の変化、行動の変わりようである。
名画中の名画である。

この正月のドラマで、またまた忠臣蔵をやっていた。堀部安兵衛を主役にしていたが、内容は、いつもの赤穂浪士である。
時代劇では、過去、人気ものといえばまず忠臣蔵だが、同じく新撰組と次郎長一家も人気である。
最近では、清水一家はあまりやらなくなった。
「やくざモノ」だし、時代が時代だけに仕様がないか。

以前にも言ったが、上の3路線は、昔は、その映画会社の主だった俳優を総出演させることが出来るので、都合が良かったのだろう。
年末には、よく上映されていた。
近頃は、それに戦国モノが加わってきた。
これも、元亀、天正、慶長と西暦1600年代あたりまでは、様々な武将と女たちが活躍していた時期だから、人気どころが大勢出演できる。

例えば、昨年の大河ドラマ「江」では、次のようであった。


 「江」の母は「市」で、三姉妹の長女が「淀」次女が「初」である。江は末娘であった。
 何れも、それぞれがスターだ。この周辺には人気者がいくらでもいる。
 市の兄が「信長」、市の最初の夫が「浅井長政」、次が「柴田勝家」である。
 信長を本能寺で殺したのが「明智光秀」で、その娘が「細川カラシャ」、また、明智を討ち取ったのは「豊臣秀吉」で、信長の第1の腹心である。
もう、切りがないほどつながっている。
 秀吉の妻が「おね(ねね)」で、側室が江の姉の淀であった。
 江は、三度、政略結婚を秀吉にさせられたが、最後が二代将軍「秀忠」であった。
勿論、秀忠の父は「家康」である。
 秀忠と江の間に生まれたのが「千姫」であり、秀吉と淀の間に生まれた「秀頼」と結婚した。
 ここで、信長の血筋と秀吉と家康の血がつながったことになる。
戦国時代の3大武将が、実は、血縁になっていたのだ。
 また、秀忠と江の間には、男の子の「竹千代」と「国松」が生まれている。竹千代が三代将軍「家光」になる。


 まだまだ、相関図には乗せたい人が大勢いるが、これ以上はしつこいからやめる。

 一つだけ加えれば、あの信長の長男「信忠」と武田信玄の第五女「松姫」は、許婚だった。
 事情が出来て、破談になったが、もし一緒になっていれば、大変な相関図になっていたし、歴史が大きく変化したことだろう。

時代劇は、歴史的真実と虚像が混ざり合い、そこに人間の欲望や
生き様が渦巻いて、限りなく興味がわくし、現代の様々な事象に照
らし合わせることも出来る。
また、物事の思考方法や対処の仕方についても、実に参考になるし、実際、作り事ではなく、私たちの先祖たちのことなのである。
先人たちのしてきたことは、窮地に追い込まれてどう処理したらよいのか、新しい指針を示してくれていることが多い。

だから、時代劇は、どんどん復活して欲しいのに、現実は逆だ。
あの長寿番組の『水戸黄門』も終わってしまった。
時代物は、制作費がかさむらしく、各局とも作りたがらないらしい。
寂しい時代になってしまった。
だから、僕は、このところ、ケーブルテレビの『時代劇専門チャンネル』に傾倒している。


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村瀬執筆 時代小説
プロフィール

村瀬彰吾

  • Author:村瀬彰吾
  • 2004年大河ドラマ「新選組!」の決定以来、新選組特命主幹、日野市立新選組のふるさと歴史館館長を経て芸術文化担当として歴史に触れる毎日の生活を送っている村瀬彰吾のブログへようこそ!
    日野市在住。2006年に小説「人間 土方歳三」を出版しました。小説の詳しい情報や通販はH Pに。
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