村瀬彰吾がつづる新選組話題を含む日記&エッセイ。

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土方歳三と『森の石松』 その2

 前回は、『鳥羽伏見の戦』で土方歳三がたどった軌跡を歩いてみようと、京都を出発して伏見へ向った話をした。藤森神社から始まって、御香宮、伏見奉行所跡を見て、旅籠寺田屋を過ぎ、三十石舟の運行する宇治川支流と濠川の合流する地点までやってきた。
このあたりを散歩し始めたら、次郎長一家の石松のことを思い出した。森の石松がその三十石舟に乗ったときのことを紹介しようとも思ったが、あえて新選組にパロディ化して話をはじめたところで終わった。
今日は、その続きを書く。

「新選組は、京都を根城に大坂方面へも出張するってから、運がよけりゃ、これからお目にかかれるかも知れねえよ」
 連れの若いのが、さらに寄り添ってきた。
「その新選組ですがね、頭目はどんな奴なんですか」
 商人風の男、持っていた猪口をグイッと口の中へ運んでから、
「新選組は、……頭領を局長といってな、近藤勇という男が仕切ってる。この男、出は多摩地方の百姓なんだが、天然理心流という流派の四代目をついで、道場主になった。だが、ひょんなことから食客を引き連れて京都へ行くことになっちまった。天下の名刀、虎徹ってやつを振り回してな、あの京で、今最も恐れられている新選組の局長さ」
「へええ、京都は、一昨年あたりから、天誅とかでぶっそうな世の中に変わっちまってますが、今度は幕府の方にも天誅団が現れたってわけか。そんな強い奴らの集団でも、序列ってもんがあるんでしょうね」
「そりゃそうさ。この衆、変わった役職をつけていてな、聞いたこともねえ役柄をつけていやがる。局長の下に副長って者を置いていて、二人いる。その下はその副長を補佐する副長助勤てのがいてな、10人ほどいるはずだ」
「そんなつええ奴らの中で、一番つええのを教えてくださいな」
「ふむ、」
 この二人に背を向けて座っていた原田、話が佳境に入ってきて、そのままの姿勢で二人に尻をずり寄せた。
「一番つええのは、……そうさな。その試衛館道場で師範代を勤めていた沖田総司って奴さ」
「ほうう、年の頃は」
「確か、新選組の中でも一等若い部類で、二十歳そこそこだ」
「どんな筋を使うんですか」
「この沖田っていう若いのは、天然理心流の得意技でもある突きの名人ということだ。お前さんも知っての通り、京都の町屋は天井が低いし、道筋も狭い。長い刀は禁物で、この男の突きが大いに役立ってるってことさ」
 すぐ横で耳をそばだてじっとしていた原田、一番が沖田と聞いてがっかりしたが、
『まあ、しょうがねえか、あいつは確かに強いからな』
と納得。
 連れの男、自分も美味そうに杯を一気に含んでから、
「そいつが一番か。じゃ、二番は誰ですか」
「うん、そうさなあ。……蝦夷は松前藩脱藩の永倉新八だ。この男は神道無念流をつかうんだが、道場よりも真剣による実践に強い」
 原田、自分の名が出てこないので、腹立たしくなってきた。
『永倉さんか、面白くねえが、俺より確かに稽古が進んでる。ま、仕様がねえか』
と諦めた。
「次は、どうですか」
「うん、そうさなあ。まあ、副長の土方歳三ってとこかな。こいつは、決して真面目に天然理心流をやったわけじゃない。だから、ほとんど自己流ってとこだが、そもそも喧嘩に強い型の男でな、おまけにとにかく色男だ。色街だけではなく、堅気の女にも持てる。役者にでもしてえくらいの色男振りさ」
 『あの土方がもてる……。馬鹿野郎、俺だってもてるじゃねえか。まっ、仕様がねえや。奴がもてるのは事実だしな。それに、腕の立つのも尤もだ。もうそろそろ俺の番だろう』
「その次は誰ですか」
「うん、そうさなあ。……仙台出身の山南敬助というとこだ。こいつも土方と同じ副長だが、北辰一刀流の使い手でな、人柄の良さと博識で、局長の近藤に気に入られている。近藤という奴は、自分が百姓の出だからだろうが、教養のある奴が好きなんだ。その分、自らも勉学に励んでいたんだが、土方はそういった近藤に困っていたようだ」
「次は」
「井上源三郎」
 我慢ができなくなった原田、とうとう二人の方へ向き直ってしまった。
「おい、お前ら、さっきから聞いてりゃ、知ったようなことばっかり抜かしやがって、本当に新選組のことがわかってんのか」
 あっけにとられた二人だったが、講釈師の方が、
「あっ、一人忘れていた」
「そうだろう、そうだろう」
「これは血筋のよい男でな、伊勢は藤堂藩の出身で、お殿様のおとし子だといわれている藤堂平助」
 いらいらも限界に達してきた原田佐之助、
「おい、もういい加減にしろ。知った振りしやがって、おめえなんか、何もわかってやしねえじゃねえか。大体、江戸者のお前らに新選組の何がわかるってんだ」
「おっと、大事な奴を一人忘れてた」
 原田の顔色が変わった。
「おいおい、そうだろう、そうだろう」
「こいつは、つええ」
「あっ、そうかい。あんた、江戸っ子だってねえ。まあ、いっぱいやってくんな」
 原田、自分の徳利を講釈師の猪口に強引に注いだ。
講釈師は続けた。
「こいつは強いんだが、槍が専門さ」
「うんうんうん、そうだ。それでいいんだ。そいつを忘れちゃいけねえよ。で、そいつの名は」
 江戸者の二人のやり取りを、いつの間にか原田が取ってしまっている。
「こいつはな、伊予は松山の出身でな」
「いいね、いいね、あんた江戸っ子だってね。寿司食いねえ、酒飲みねえ」
「神田の生まれよ」
「早く言ってくれよ」
「槍の筋は、宝蔵院流を使うってんだが、いまひとつ信用できねえ」
「なんだと」
「だが、男っぷりは新選組でも一・二を争うといわれている。槍を持たせりゃあ、敵なしさ」
「さささ、遠慮すんなよ。寿司食いねえ、酒飲みねえ。……だからさ、そいつの名はなんていうんだよ」
「原田佐之助」
「おいおい、あんたいい男っぷりだね。月代の剃り加減もいきだし、しかも声もいい。さぞかし吉原あたりじゃ、一晩じゃ返してもらえねえだろうな。江戸っ子だってね」
「神田の生まれよ」
「寿司食いねえ、酒飲みねえ」
「だがな、こいつはめっぽう腕は立つし、女にも持てる。喧嘩ぱやいのもいいが、ひとつだけ欠点がある」
「なんでえ」
「新選組の中で、こいつほどの馬鹿もいねえって、もっぱらの噂さ」


 浪曲、清水次郎長の『三十石舟』のくだりを新選組版に変えて作ってみた。
 主役を原田佐之助というより山本太郎にしたのは、別に他意はない。一番相応しいかと思ったからだ。

 次回は、土方歳三がたどった淀へのコースを書く予定だ。
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コメント
古かったかなあ……
森の石松の三十石船のお話、一寸古かったかなと思ったのですが、
判ってくれた人もいたんですね。
原田佐之助というより、山本太郎のイメージで作りました。
あれは浪曲の中の物語なのですが、今聞いても意外と新鮮なのですよ。
お若い方々にも、浪花節の良さをわかっていただける良い機会になればと思っています。
2005/04/21(木) 22:32 | URL | 村瀬彰吾 #VvKxtd/k[ コメントの編集]
面白かったです。
パチパチパチ。
面白かったです、「左之助三十石船道中」(笑)。
そのまま映像化してほしいくらいです。
楽しいパロディ、ありがとうございました。
2005/04/17(日) 03:06 | URL | 六条 #tnzvu2vM[ コメントの編集]
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村瀬執筆 時代小説
プロフィール

村瀬彰吾

  • Author:村瀬彰吾
  • 2004年大河ドラマ「新選組!」の決定以来、新選組特命主幹、日野市立新選組のふるさと歴史館館長を経て芸術文化担当として歴史に触れる毎日の生活を送っている村瀬彰吾のブログへようこそ!
    日野市在住。2006年に小説「人間 土方歳三」を出版しました。小説の詳しい情報や通販はH Pに。
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