村瀬彰吾がつづる新選組話題を含む日記&エッセイ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

歳三がモーツアルトなら、近藤はベートーベンか

~~五年ぶりに、『燃えよ剣』を読み返してみた~~

歴史上の人物で、語りやすいタイプの人とそうでない人がいる。
幕末に限って言えば、坂元龍馬や勝海舟、西郷や大久保、近藤勇なぞは、偏見を持たずに真正面から研究すれば、大概が意見は一致するだろう。

だが、難しいタイプの人もいる。
その筆頭が、土方歳三だ。
冷静沈着で規律第一、組織の維持発展の前にはどんな犠牲でも払う。
土方歳三の発想や前進を妨げる連中は、たとえそれが大幹部であっても抹殺する。

山南であり伊東であり、藤堂であった。
それでいて、組織のためには、時には不公正な裁断もしてきた。永倉や斎藤などの幹部にはゆるいが、葛山武八郎や河合耆三郎のような下っ端には厳しく、極刑で対処したこともあった。
一切の私情、温情、例外を許さない。
すべては、軍団、組織のためであった。
だから、外部よりも内々から恐れられた。

それでいて、若い頃から俳句をたしなみ、彼の書は流麗で屈託がなく魅力的である。
僕は、あののびのびしていて、男性的な歳三の書を見るのが大好きだ。迷いがないのである。

彼の書体を見ていると、何のためらいもなくすらすらと、先へ先へと筆先が進んでいる様子が伺える。
そこへいくと、近藤さんの書は上手いが、上手く書こうという意図が十分に働いているような気がする。
誰だって普通は、そうである。

でも、歳三には、それがない。
自由気儘というか、まるでモーツアルトが天から与えられた旋律を即興で作曲していったように、混ざり気がないのである。
ベートーベンのような、消しゴムで何十回も消した痕がない。楽譜が美しい。
歳三がモーツアルトで、近藤がベートーベンか。

それが、近藤勇と土方歳三の生き方そのものであった。
片や流山で、迷いに迷って自首という選択をした。一方は、迷うことなく、どこまでも行き着くところまで行くという選択をした。
近藤は、もうこれ以上無駄な犠牲は払いたくないと思い、土方は、闘えるうちは何が何でも前に進むのであった。
(もしかして、近藤は、大久保大和という偽名を使って敵を欺こうとしていたかもしれないが、血風録の脚本を書いた結束さんはそう描かなかったし、僕もそう思いたい)

土方歳三は、近藤の自首を身体を張って止めた。
だが、無駄だった。所詮、二人の理念、生き方が違っていたのである。
僕は、『新選組血風録』の第25話"流山“を見るのが大好きで、見るたびに涙を流す。
二人の生き方の違いが見事に演じられていて、名演である。

土方歳三の才覚で、多摩の百姓を幹部にすえた新選組が京都で、最後は直参にまで取り立てられた。
一体、この人物に、どうしてこんな才能、才覚が備わっていたのだろう。
歳三の生まれや育ちを振り返ってみても、それは判明してこない。司馬遼太郎は、『燃えよ剣』を書く時、その根拠を石田散薬作り時に見せた歳三の采配振りからくるものだとした。
この経験が、後の新選組副長独裁の伏線になっていたと設定したのだろう。

僕は、この図式がなんとなく納得がいかない。
だから、自分なりに考えてみた。
その結果、為次郎という盲目の長兄に着目した。
この人は歳三より23歳も上の兄で、もう殆んど親と同じである。
(一説には、もしかして、この人が父親ではないかなどという説を言う人もいる)
歳三は、京都から20通以上も郷里へ手紙を書いているが、実家宛のものは一つもない。
殆んどが佐藤家や平家をはじめとした親戚筋である。
本家には、寄り付いていないのである。
理由は、わからない。

それと、よく言われている2回の奉公も実のところ良くわかっていない。
石田村の資料では(人別帳)、実家に住んでいることになっていたりする。

歳三は、すぐ上の姉さんの嫁ぎ先(佐藤彦五郎)に、若い頃から入り浸りになっていたとも言われている(今の、日野宿本陣)。
(余談だが、僕の父親というのが大酒のみで母に暴力を振るうので、小さい頃から家にいるのがいやだった。だから、3人の姉さんの嫁ぎ先に順番に泊まりにいっていたことがあった。不思議と、兄さんのところには行かなかった)

そして、俳号は豊玉である。
歳三の生まれた本家は、確かに先祖の代から俳句は盛んであったが、
俳句を義兄や長兄から教わっていたと思う。彼の俳号は、義兄の佐藤彦五郎(春日庵盛車)や長兄の為次郎(石翠)からもらったものと推測する。

為次郎が末弟の歳三の性格を見抜いていて、二人してよく彦五郎のところへ泊まっては、

「お前の性格では、頭目には離れない。二番手が良く似合う。統領へ補助する役目に徹してこそ、真価が発揮できる男だ」

「近藤さんを、引き立てるのだ」

と、言って聞かせてきたと、設定した。

だから、歳三の墓石に為次郎の戒名が彫られている。特別に、この兄とは、因縁があったのではないかと。

それから、歳三の男っぷりから言えば、女関係も考えなければならない。
この度、「燃えよ剣」を読み返してみて、その冒頭から、執拗に司馬さんは歳三の女好みについて触れている。
歳三の夜這いのやり方、薀蓄を大いに語っている。
こういう小説も珍しい。
のっけから、主人公の夜這い、くらやみ祭りでの情交なのである。
それでいて、この物語は、歳三の純愛小説でもある。
お雪さんという恋人を登場させ、函館までこの女性に行かせている。

その「燃えよ剣」が、新しくDVDになってこの度売り出されたという。
今、NHKでは、「新選組血風録」を新ヴァージョンでやっているし、結構そのモードに入ってきているのかも。

poster.jpg

この土方役を演じた栗塚さんが、もうあと10日もたてば日野にやってくる。
先ほど彼から電話があって、『栗塚旭を囲む会』で、僕がサックスを吹くかもといったら、自分も歌いたいといっていた。
彼は、ジャズもシャンソンも歌うんです!
もしかして、共演があるかも??

スポンサーサイト
コメント
シノピリカ
シノピリカさん、確か、血風録の最後はシノピリカでしたね。
その前が、流山だった記憶があります。

僕は、あの流山が大好きで、自分の講義では何度も受講者と一緒に見てきました。
そして、今でも、だらしないけど涙します。

きっと、結束さんの作り方が僕の感性に合いすぎるのではないかと思うのです。
そして、あのシーンは、僕の小説にも大きな影響を与えていて、「人間土方歳三」の中の近藤と土方が綾瀬川で語り合う場面は、まさしく彼らの生き方をあそこで述べたものです。

僕は、純粋な小説家ではないので、ああゆうシーンを書くのにてんで時間がかかりました。セリフが長いので、読者が飽きてしまうのを恐れて、途中で小舟がゆっくりと進んで行ったり、雲雀が飛び上がる光景を書いたり、大変でした。

それから、「歳、自由にさせてくれ」というセリフ。
僕は大好きなんですが、新選組ファンはいやかもしれませんね。
なんだか、近藤は、土方歳三の前では、長い間我慢してきたみたいで。

でも、実際、そうだったんじゃないかな。
山南さんの処断も伊東や藤堂の闇討ちも土方の発案で、近藤はそれに付き合ってきたのかも。

でも、土方がいたから、新選組はあそこまで発展したのです。
勿論、それは、近藤もわかっている。
でも、最後は、自由にさせてくれって。
そこに、結束さんの、想いが隠されているように思えますが。
2011/05/23(月) 00:38 | URL | 村瀬彰吾 #LrjyFU7Y[ コメントの編集]
それなら栗塚さんはブラームス?
ブラームスは、生涯独身でした。また彼の言葉は鋭すぎ、彼の友人ですら、「ブラームスと話すと胃が痛くなる」と言ったそうです。
ブラームスの音楽というと、そういったブラームスの印象とその頑固そうな容貌からか、「重厚」「ドイツ的」だと思い込んで来ました。しかし私も年をとったせいか、この頃妙にロマンチックで、くよくよ恋に悩む曲と聞こえてきます。
栗塚さんは、ニヒルで寡黙、きわめてストイックで男の哀愁を背中に漂わせる、そんな重厚な男性像を演じてこられました。しかしその強烈な男臭さは、決して汗の臭いがしない、脂肪が一切ついていない、洗い上げたような都会的洗練の中にあるのです。
ところが実際の栗塚さんは、明朗闊達な方です。おしゃべりで人間好きで陽気です。気難しいブラームスはロマンチックな音楽を生みましたが、陽気な栗塚さんは重厚な男性像を生みました。その一方、ファンの中で「栗さま地雷」(どこに不機嫌の元があるのかわからないがうっかり踏むと簡単に炸裂する、という意味で)といわれる気難しい側面もお持ちではありますが。

私は『血風録・流山』にあたる『燃えよ剣・流離の日々』も好きです。官軍の陣地へ行こうとする近藤を土方がとめる場面です。男はその生き方の何に美しさを感じるのか、という点で、「お前とは意見が違った」と近藤は土方にいいます。
「お前は新選組を作った。その組織の長である私も作った。今思えば、京にいた私は、私でなかったような気がする。歳、自由にさせてくれ」
原作で読んではいても、実際にこの言葉が語られると、生きることの悲しさというか切なさというか、とても言葉で言い尽くせないような、人間存在そのものの悲しさをみせられたようで、涙が止まりませんでした。
『血風録』も『燃えよ剣』も、いずれ劣らぬ名作です。
2011/05/22(日) 13:23 | URL | シノビリカ #auyQKGwQ[ コメントの編集]
コメントの投稿
【Font & Icon】
管理者にだけ表示を許可する
村瀬執筆 時代小説
プロフィール

村瀬彰吾

  • Author:村瀬彰吾
  • 2004年大河ドラマ「新選組!」の決定以来、新選組特命主幹、日野市立新選組のふるさと歴史館館長を経て芸術文化担当として歴史に触れる毎日の生活を送っている村瀬彰吾のブログへようこそ!
    日野市在住。2006年に小説「人間 土方歳三」を出版しました。小説の詳しい情報や通販はH Pに。
    サイトに関してのお問い合わせ(動作不具合など)は管理人までお願いします。
    村瀬へのメールはこちら






リンク
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カテゴリー
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新の記事
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

最近のコメント
最近のトラックバック
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。